第22章 I am not knowing
入り組んだ路地裏で、意識を戻した爆豪は、緑谷から引き剥がれる。
「勝手な真似してんじゃねぇ!!」
「勝手なのは君だよ!
オメガとかアルファとか…いきなりどうしたんだよ!」
「うるせぇ…」
千鳥足でもまだ、爆豪が目指すのはオールマイトのいる方向だ。
緑谷は爆豪の篭手を掴み引き止めると、力づくで壁に押し付けた。
「縫井さんのこと…。
どう思ってるのさ…」
「あ?ンなもんてめぇに話す義理はねぇ」
唐突な問いかけだったが、爆豪とやっと会話が繋がった。
緑谷は感触をつかみ、ぐっと顔を上げる。
「好きなんだろ?!
今まで毛嫌いしてたオメガだったとしても…好きになったんだろ?!」
「知った口聞くな…俺が…あいつに抱いてんのはンな簡単なもんじゃねぇ…」
緑谷の手を振りほどくと、爆豪は緑谷を睨み殺しながらつぶやく…
「……かっちゃん…それって…」
爆豪の後ろ姿が突然弱々しく見えて、緑谷はそっと目を瞑り、息を吐いた。
「かっちゃん…僕のことが嫌いなのは、わかってる……
でも、君は確実に変わったよ…
縫井さんと出会って…君は……
君は…確かに、高校までの君は、オメガと協力なんてぜったいしなかった…
でも今は……。
負けを認める前に、僕(オメガ)…使うくらいしてみろよ…!」
言い終わるが早いか、鳴り響く爆発音と、立ち上る黒煙。
緑谷は目を大きく見開き、ひぃ…と悲鳴をあげた。
バラバラと破片がこぼれ落ちるのは耳先から数センチ先のコンクリート壁。
縦3mほど入った亀裂が威力を物語る。
。
「グダグダグダグダうっせぇんだよ……」
緑谷は、爆豪との会話が詰んだことを察し、肩を落とした。
やはり埋まることのない溝が目の前に立ちはだかる…。
だが…
「…一回しか言わねぇから、よく聞け」
少しの間の後…
唸るように呟かれた言葉に、緑谷は顔を上げた