第22章 I am not knowing
オールマイトは、どうしたものかと考える。
思い出すのは苦い記憶だ。
入学当初、最初の実技演習でプライドの折れた爆豪に激励の言葉をかけた時…。
(爆豪少年は良くも悪くもプライドが高いからな…今の状態で何を言ったとしても聞く耳を持つまい。)
目の前から、また闇雲に飛び込んでくる爆豪と、それを止めようと駆け寄る緑谷。
「なんにせよ、君たちは【協力】の、意味がわかってないな!」
骨が砕けるような重い一撃に、爆豪は吐瀉するが、片手を地面に突き、どうにか体を立ち上がらせる。
「黙れ…オールマイト……
あんな、オメガの力を借りるくれぇなら…
負けた方が………マシ、だ!!」
今まで、勝ちにこれ以上ないほどの執着を見せてきた爆豪…
その口から、勝利を無下にするような言葉が出たことに、オールマイトは少し哀しみを感じていた。
「そうか…後悔は、無いようにな…」
(爆豪少年…君からは、その言葉……)
聞きたくなかったよ。
爆豪は、左頬で拳を受け止め、四回ほど叩きつけられながら、地面に着地した。
オールマイトは呆気に取られる。
ーーーというのも、自分の拳は、爆豪を捕らえていなかったからだ。
横を見れば、右腕を突き出した緑谷。
その白いグローブには、血が少量かかっている。
「…君が……君がそれを言うなよ!!!!」
呆気にとられているあいだ、爆豪を担いだ緑谷は、路地裏へと姿を消した。