第3章 I am general course
『今日は何の授業なの?』
「USJが直ったらしいから、災害訓練をやり直すらしい」
あれから2日しか経っていないというのに、もう修理が済んだというのだから驚きだ。くるみも同じことを思ったのか『もう直ったんだね』と目を丸くする。
その吸い込まれそうな瞳と目が合っただけで轟の心臓は鼓動を早めた。
時より吹く風にふわふわとなびく茶髪を細い指が耳元へかきあげる。
ほとんど葉桜になった桜の木に、しぶとくしがみついていた花びらが、ひらりと舞って
くるみの唇に張り付いた。
薄く塗られた透明なグロスが、花弁を濡らす。
「くるみ。花びらが…」
『え…?』
轟が伸ばした指先がそっと唇に触れたけれど、くるみはさして気にしていないように、じっ…と轟にされるがまま微動だにしない。
そんな無抵抗な彼女に、轟は何故か…とても悪い事をしているような気がしてしまった。
(ーーー花びらが付いていたから…取るだけだろ)
悪いことなんてしていない、と何故か言い訳をして
薄いサーモンピンク色の唇に触れる。
柔らかさが指先を押し返して、ハートの形のピンク色がもう一度風に舞った。
『とれた?』
「……あぁ」
ありがとうと笑うくるみにチクン…と胸が痛む…
そんな男の下心を知らない彼女の瞳がさらに明るさを増して跳ねた。
前方100メートル先に注がれるその視線は、前を歩く腰パンの男を捕らえている。
『爆豪くんだ…
轟くん、また後でね』
辛い別れの言葉だけを告げて走り出そうとするくるみの腕を
轟はしっかと握って引き止める。
「……」
『…?どうしたの』
くるみは走り出そうとした足を止めて、轟に振り返った。