第22章 I am not knowing
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《戦闘訓練…スタート》
合図の放送が鳴り響くと、爆豪はまるで1人で戦うつもりだと言いたげに、緑谷を置いて試験場に入った。
試験場は街をまるごと模した作りで、十階建てほどのビルが建ち並んでいる。
爆豪の後ろを緑谷は追いかけ、満を持して声をかけた。
「ねえ、かっちゃん…!この試験は先生がヴィランで、僕らがヒーロー役で…
対戦するか、応援を呼ぶかの判断が決め手な訳なんだけど…
僕らの相手はオールマイトなわけで…
合格するには、逃げの一択なわけなんだけど…」
「正面から戦わねぇと意味ねんだよ!
俺はオールマイト(アルファ)をぶっ潰さねぇと…勝たねぇと前に進めねぇんだよ!」
「そんなの、無理だよ!自殺行為だ…!」
「どけやデク!てめぇは勝手に逃げりゃいいだろ、クソオメガが俺に指図してんじゃねぇ」
「オメガオメガって…僕だって好きでオメガなんじゃない…!縫井さんだってそうだ…なのに…なのに君は!」
言い争いを中断させたのは前方から突然の砂嵐…
いや、飛んできたのは砂と呼ぶにはもっと大きなもの、例えばめくれ上がった地面のコンクリ破片。
ビルの割れたガラスや、抜けた表札…。
けたたましい轟音とともに巻き起こる強風に、2人の体は呆気なく吹き飛ばされた。
「な……っ」
「かかってこいよ、ヒーロー共!」
立ち込める砂嵐の中、徐々に浮かぶシルエット…
そこに居たのは平和の象徴であるはずの男…なのに一度(ひとたび)、役としてであってもヴィランと名をつければ
平和の象徴であるはずの男は世界一の脅威となる。