第21章 I am coward
小さく鼻歌を歌いながら縫われていくのは小さなぬいぐるみ。
くるみは個性の性質上、ぬいぐるみ作りが得意で
実際自分が使っているぬいぐるみは全てくるみの作ったものだ。
頭まで作ったところで、くるみは時計を確認して
材料をカバンに収める。
その2分後、爆豪が教室に迎えに来て、手を繋いで学校を後にした。
そんな2人の何メートルも後ろ、
2人を見つめるオッドアイに、緑谷は声をかける。
「…ごめんね、轟くん」
「なにがだ?」
申し訳なさそうに、リュックの肩掛け部分を握る緑谷は
気まずそうに俯いた。
「僕のせいだよね…、出しゃばったことしたから…」
「いや、緑谷のせいじゃねぇ…
爆豪がくるみを幸せにするなら、それでいい」
「でも、あの二人まだ番になってないんだよ…?
やっぱり、僕…許せないんだ。
縫井さんほどのヒートなら、早く番ってあげないと…」
「…そうだな
でも、俺たちに出来ることは、もう何もねぇ」
夕日に照った2色の前髪が風にそよいだ。
それがやけに悲しく見えて、緑谷は涙をにじませる。
「ごめん…轟くん…
ごめんね」
「緑谷は悪くねぇ、くるみの心の中に、爆豪しか居なかっただけだ。」
小さくなっていく2人の後ろ姿は、ひとつに溶け合うくらいピッタリとくっついている。
(あんなかっちゃん…初めて見る…
あんなに縫井さんのこと、好きそうなのに何で番いにならないんだろう…)
緑谷は、解決しない疑問に首をひねりながら、ゆっくりと歩き出した。