第20章 I am not so bad
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すぐ側にある、柔らかな手を握りしめたいと思った回数。約400回
涙ぐむ彼女の涙を拭いてやりたいと思った回数。12回
このまま唇を奪ってもいいだろうかと思った回数。5回
早く映画が終わらないかと願った回数。450回
地獄のような2時間を終え、明るくなった劇場で、隣の獲物が小さく背伸びをした。
『楽しかったね』
未だ潜められた声で、そっと呟くくるみにまた1つカウントが増える。
増えたのは、上から3番目のヤツだ。
「あぁ」
そっと笑顔を作ってみせるけれど、うまく笑えている自信はない。
人の波にのって、映画館を出ると、くるみはゴミ入れにプラカップを捨てながら振り向いた。
『結局、デクくんから折り返しなかったね…
轟くんの方には返事来てる?』
俺は確認するフリだけをして
「いや、来てねぇ」
と答えた。
『そっか、なら帰りにデクくんの家に寄ってみようかな』
「…もう帰んのか?」
電車の時間を調べ始めるくるみの手を掴む
くるみは驚いた表情をこちらに向けて、気まずそうに
『うん…』と呟いた。
その返事に思わず、細い腕を掴む力が強くなる、
「…久しぶりに話してぇ」
くるみはほんの少し困った表情を見せた。
『でも…』
悩んでいる理由はわかる。
事故であってもあんな事があった仲だ…。
休日に、2人きり、しかも学校近くのショッピングモールだ。
誰かに見られて変な噂をたてられては、爆豪が好きなくるみからすれば、勘違いは免れたいのだろう。
だが、そんな彼女に、俺は卑怯な言葉を使う。
そっと覗き込んで、視線が絡まった。
「いいだろ?
友達なんだから。」
何も言わず、ゆるゆると頷いた彼女の目が
突然見開いた。