第20章 I am not so bad
【あぁ、予定はねぇ】
そう返信してから、ふと思ったのは、こういう時くるみに予定を確認したほうがいいのかどうかだ。
(付き合ってたら土日はデートとかするもんなんか…?
チッ…興味なかったからわかんねぇな…)
確認を口実に鳴らした電話。
本当は、ただ話したかっただけなのかもしれない。
3コール程でとられる受話器
《もしもし!?爆豪くん?!》
「あぁ、
今週の土曜予定あるんか
切島と勉強会する」
《え?あー期末の?》
「あぁ」
《いいなー私も教えて欲しい…けど、土曜日は予定あるや…残念》
「テメェにはいつでも教えてやるわ、
まぁ、予定あんならいい」
《うん、教えてくれてありがとう》
要件だけを済ませてしまうと、もう話す内容はなくなってしまった。
それもそうだ、さっきまで一緒に居たのだから…。
「話は終いだ。電話切れ」
《爆豪くんが切って?》
「……わかった」
《切ってないじゃん》
「うるせぇ」
受話器からはくすくす笑う声が聞こえる。
《じゃあ、いっせーのーでで切ろうよ》
「…」
《いくよ?
いっせーのーで!》
《……好き》
「おま…!」
耳に流れ込んできた甘いつぶやきに途端に顔が赤くなる。
《切らなかった罰だよ》
「テメェだって切らなかっただろうが」
《ふふふ、そうだねゴメン》
結局、今回はくるみが切って通話はおわった。
クスリ…と笑いが溢れるのは、もうどうしようもないのだろう。
身を包む、どうしようもなく甘い感覚に、少しの間だけ身を委ねた。