第19章 I am a boy
モヤモヤして、ムカムカして2人から目をそらす。
「轟くんが好きだって気づけば、縫井さんの気持ちも変わるかもしれないのに…」
「言おうとした…したが…ちょうど爆豪が入ってきて」
「かっちゃんが!?」
「あぁ…すげぇ剣幕だった」
「なんだよ…それ…、
自分は番うつもりないのに、轟くんに取られるのは嫌だっていうの!?」
ダン!と机を叩くと、隣の席の先輩がビクッと肩を揺らした。
熱くなりすぎていたことに気付いて体を小さくする。
なんだか、僕にとって縫井さんは初めて関わる他人のオメガで…
ヒートのことや、僕らが保須であったこととか…いろんな秘密を共有しているせいか、僕にとっても本当に大切な存在になっていて…。
かっちゃんのこと、信じて託したのに
こんなのってあんまりで…
「ねぇ、轟くん…」
「なんだ?」
「轟くんが、縫井さんを諦めてないなら…
僕、協力するから
縫井さんはかっちゃんじゃなくて
轟くんと居た方が幸せになれる。」
「緑谷……」
あの時、僕が選択をミスしたから、こうなったのであれば
今度は、正しいことをしたい。
そんな自己満足に近かったのだと思う…。
人の幸せは、他人には測れない。
だとしても、少なくとも
番になる気のないアルファに、ボロボロに弄ばれるより
本気で愛してくれるアルファに、幸せにしてもらった方が幸せだ。
思えば、僕は縫井さんとお母さんを重ねて居たんだと思う。
愛があっても、番が居なくちゃ一生あの苦しみに耐えないといけない…。
縫井さんにはそうなって欲しくない
そんなエゴだったんだ…。