第19章 I am a boy
「でもなんで、くるみが爆豪と番になってねぇってわかるんだ?」
「轟くんって、本当にオメガのこと知らないんだね」
攻めたわけではなくて、純粋に出た言葉だったんだけれど、轟くんは後ろめたそうに
「悪りぃ」って言った。
「い、いや!攻めてるんじゃなくて…
えっと、番のいるオメガは首輪をつけなくて良いんだ。
番の噛み跡は一生消えないし、上から他のアルファが噛んだところで無意味だしね。
オメガは番ができてはじめて、自由の身になれるんだよ…。
その証が首輪の有無
縫井さんは首輪をつけてるから、現時点番が居ないってことになる。」
「爆豪がくるみに執着してるみてぇだったから…もう番っちまったのかと思ってた…」
轟はどこか安堵したように息を吐くが、今度は首を傾げた。
「なんで爆豪はくるみと番わねぇんだ?
爆豪にならくるみは首を差し出すだろ…」
自分で言いながら傷ついたようで、轟は顔をしかめる。
「…かっちゃんが縫井さんを騙してるからだよ」
「……!」
「かっちゃんは、昔っからアルファ婚に固執してた…。
ベータばっかりだったうちの中学で、誰に告白されても「アルファにしか興味ない」って言い続けてたし…
そんな人に頼った僕も…なんか…血迷ってたのかな」
「頼った…?」
緑谷は悔しげに顔を歪めると、膝の上でぎゅっとこぶしを握り「あの日」のあとの話をし始めた。
「………あの日、轟くんが縫井さんの部屋から帰ったあと…
僕はかっちゃんの家に行ったんだ…
番になってくれって頼むためじゃなくて…ただ、服を…巣を作るための服をくれって頼みに」
轟は相槌を打つこともなく、緑谷の話に耳を傾ける。
「そしたら、かっちゃん…自分が行くって
抑制剤飲んでるから大丈夫だって言ったんだ…
かっちゃんは縫井さんのこと好きそうだったし、もしかしたら…もしかするかもって…僕も止めなかった」