第17章 I am not your destiny
緑谷が教室に戻ると、担任の相澤は一瞬そちらを見たが、緑谷の顔が青ざめているのを見て、叱咤するのを躊躇し
「早く席につけ」とだけ声をかける。
「はい…すみません…」
静かに席に着く緑谷を、轟は横目に、バツが悪そうな顔を軽く俯けた。
だが、昼休憩のチャイムが鳴ると同時に、立ち上がった轟は、まっすぐ緑谷の席に行くと
「いいか?」
と声をかける。
「うん…」
轟に付いて、緑谷が教室をあとにするのを、爆豪はあえて直接見ないようにしているのか、窓の反射越しに見ていた。
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「こないだは…殴ってくれてありがとな…
ヒートに当てられちまって、理性がなくなってた…」
「ううん、僕の方こそごめん…
痛かったよね。」
「あぁ、おかげで正気に戻れた…
が、やったことには変わりねぇ…くるみに謝ってから、処分を受けようと思っている。」
法的には非のないアルファでも、自首という形を取れば、強姦罪として裁かれる。
だがそのような事は、ごく稀で、大半はオメガの一方的に泣き寝入りだ。
「それは縫井さんがどう判断するかによるけど…
でも……
ねぇ、轟くん
轟くんは、本当に縫井さんが好き?」
「あぁ、好きだ…
一方的な感情だが、それを知ってもなお、
あいつのことがどんどん好きになる」
轟は苦しげに思いの丈を緑谷に吐き出した。
緑谷はそれを聞きながら、どこかホッとした面持ちをする。