第3章 I am general course
「クソ親父の個性を使わずにナンバーワンヒーローになるのが俺の夢だ…
その証明として、まずは体育祭で一位を目指してる」
『そうなんだ…』
体育祭か…と、くるみはまた少し表情を暗くした。
『体育祭で、少しでも…せめてトーナメントまでいけたら
ヒーロー科に編入できたりするのかな…?』
「……どうだろうな」
うーん、やっぱり一位じゃないとダメなのかな?と首を捻るくるみに轟は荒くなっていた心を和まされる。
「くるみはなんでヒーローになりてぇんだ?」
『…え?』
轟の問いに、くるみは恥ずかしいよ、と顔を隠す仕草をするが
少しだけ開けた指の間から覗き込むように轟を見つめた後
『笑わないでね?』と念を押す。
「笑わねぇ」
くるみは轟が約束してくれたことを確認して、顔を隠したまま話し始めた。
『えっとね…普通なのがすごく嫌…みたいで
ほら、個性も普通…性格も普通…なんかいろいろ普通なの
だからね、その…昔からプリキュアとか好きでして……』
「アニメみて目指したのか?」
『………ぅん』
完全に指の隙間も閉じて、ね?ロクデモナイ理由でしょ!?と耳まで赤面する。
轟は、ほんの少しだけ吹き出してしまったのだが
『あぁ!笑わないっていったのに!』と注意され「悪りぃ、かわいくて」と素面で答えた。
『かわいいって、絶対バカにしてるし…』
はぁ…とため息をついて、くるみはベンチから立ち上がるとカバンを掴んだ。
「怒らせちまったか…?」
『うん、怒った!
怒ったから、明日も話聞いてね?』
ぴょいと首を傾げて笑うくるみに、じわりと胸の奥が熱くなる。「あぁ」と答えれば手を振って返ってくる言葉は『またね』だ。
「また明日」と繰り返した言葉は
少女の耳には届かなかった。