第3章 I am general course
「大丈夫じゃねぇだろ」
去っていく金髪の後ろ姿は1度だって振り返らない。
少女はブンブンと首を振ると、手に持ったままの赤いネクタイで顔を隠したまま『本当に、大丈夫です』と付け加えた。
『いきなりだったし…
まだ2回しか会ってないですし…
断られるって分かってたんで』
「なんでそんな無茶したんだ」
『そんなの、好きになっちゃったからですよ!』
パッと顔を上げて笑う彼女は、まだどこか涙をこらえているように見えて…
『でもね、諦めません…
いつか爆豪くんに振り向いてもらえるように頑張るんです』
両手をぐっと握って力こぶを作ってみせるくるみに
轟は、なぜか「応援する」と言ってしまった。
初めて会った女に、今まで他人に興味のなかった自分が…
不思議なものだ。
それからというもの、くるみは轟と爆豪が同じクラスであるということもあり、色々と話すようになった。
次第に恋愛相談をするようになり、
今では教室での爆豪の様子や授業であったことを教えてもらったりしている。
「その後、爆豪と切島ってやつがペア組まされて…」
『切島くん?さん?』
「男だ。個性がたしか…硬化のやつで…」
A組のことを何も知らないくるみに轟は丁寧に説明をする。
くるみも目を輝かせながら轟の話に耳を傾けた。
『やっぱいいなぁ…ヒーロー科』
「くるみもヒーロー科受けたんだよな」
『うん、まぁ…普通に落ちちゃったけどね
轟くんは推薦入学だもんなぁ…スゴイ』
両手を小さく叩いて褒めてくれるくるみに轟はほんの少し頬を染めた。
「俺にはしねぇといけねぇことがあるから…」
『……お父さんのことだっけ』
くるみが尋ねると、轟はゆっくりと首を縦に振った。
轟もまた、くるみに色々なことを話すようになっていた。
クラスメイトとは、未だ打ち解ける様子はないが
くるみの前でだけ、自分の心の内を吐き出せている。