第14章 I am lonely
『デク…くん……たす…け…』
カサカサにかわいた唇から漏れる声は、同じくらい乾いていて
2リットル入りのポカリスエットを、ペットボトルのまま縫井さんに飲ませると、首にダラダラ零しながら半分ほど一気に飲み干した。
せっかく飲んだのに、すぐに洗面台で吐いてしまって…
涙と汗でグズグズになった縫井さんを、どうにかベッドに運ぶと、先月同様…全く意味のない【巣】が出来上がっていた。
先月よりヨレてしまった赤いネクタイを縫井さんは震える手で引き寄せ抱きしめると、また息を荒げて苦しげに眉を潜めた。
「注射打つよ?」
『いや…やだ……注射、頭…痛くなる…割れそうになるの…』
「でも…この熱じゃ、死んじゃうよ
…お願い、我慢して?」
ビビットピンクの注射液は、おどろおどろしくて嫌いだ。
縫井さんの太ももにそれを刺すとゆっくりと、体に流し込んでいく…。
『うっ…ぁああ゛!!』
数秒して、頭を抱え、のたうち回る縫井さん
何も彼女が特別薬の効きが悪いんじゃない…。
この薬はそれほどに副作用が強いんだ。
『いたい…!痛いよ!…!頭…ウッ…ウェ…』
すぐに風呂場から用意しておいた洗面器を渡すと
ただの透明な液が口から漏れる。
その瞳は焦点が合っていなくて、ただ苦痛げに涙を零すだけ…。
額に手を当てると、さっきよりはずっと熱が下がってきたみたいだ…。
ただ、熱と性欲を抑える…その為に伴う苦痛は計り知れない。
縫井さんは、震えを増した手でベッドの上を探る。
「これ?」
『う…ぁ……ばくごーくん……』
差し出したネクタイを愛しげに鼻元に持っていき、瞳を瞑る縫井さんに、涙が滲んだ。
まだ苦しそうな顔で、スヤスヤと寝息を立て始めて、どうにか胸をなでおろした。
あまりの痛みに、気絶したんだろうけど…
今だけでも休めたらいいよね…。