第14章 I am lonely
ふと視線を感じた気がして、振り向くと、人影が廊下で揺れた。
くるみを驚かせねぇように立ち上がり、廊下を覗く
遠くの方で、見慣れた後ろ姿が、角を曲がるのが見えて
くるみには悪りぃが、少し笑みがこぼれた。
『どうしたの…?轟くん』
「……いや、何でもねぇ。気のせいだ」
席に戻ると、くるみは、またスマホで時間を確認していた。
「まだ来ねぇのか?」
『うん…、ねぇ、爆豪くんって轟くんが教室でた時
まだ教室に居た?』
「居た…切島と上鳴に誘われてたけどな」
『切島くんと、上鳴くん……そっか…
約束忘れちゃったのかな…』
さっきまでオレンジ色だった教室も、徐々に暗くなってきていた。
「……まだ待つか?」
『うん…あと、20分
…7時まで』
「付き合う」
くるみは、眉を八の字に下げたまま『ありがとう』と笑ったが
礼なんて言われる資格、俺にはねぇ…
さっき、廊下を翔けて行ったのは、爆豪の後ろ姿だった。
くるみが、俺と一緒に居るのが気に食わなかったのか…
それとも別の理由か……
どちらにしろ、爆豪は約束に来ねぇ
その原因は、俺だ。
その事が、酷く嬉しくて
俺はニヤけそうになる口元を閉めるのに必死だった。
(どうやって…慰めてやろうか……)
くるみの好きなものを、頭に思い浮かべながら
残り20分、来るはずのない爆豪を、待つフリをした。