第13章 I am a egg
結局、その日はあまり眠れなかった。
「おはよう、轟くん」
「おはよう、眠れたか?」
「うーん…あんまり…
あんな最後、見せられたら…ね」
ヒーロー殺しの最後…確かに、今思い出しても体の力を奪われるような威圧感だった。
「冷静に考えると…すごいことしちゃったね」
思い出すのは昨夜の戦闘。
飯田の兄「インゲニウム」を襲った、ヒーロー殺しステイン。
多くのヒーローを粛清という名の元に殺してきた男。
ステインとの戦いは、時間にしては10分程度の短いものであったが、結果的には俺達はその男を仕留め拘束する事に成功した。
けれどそれは、結果的なもの…
俺と緑谷はあからさまに「生かされ」た。
手加減と、本人のミスがあって初めて得られた勝利…。何も誇れることではない。
「生きてるのが奇跡だって思っちゃうよ…」
「そうだな」
「そう言えばね、さっき縫井さんが…
緑谷の言葉を遮るように、病室のドアが開き二人のヒーロースーツの男が入室して来た。
「グラントリノ!」
「マニュアルさん…」
ホッとした表情を見せる緑谷に対して、飯田の表情は芳しくない。
グラントリノと呼ばれた長老の男…。黄色いヒーローマントをまとった低身長は、ズカズカと緑谷に歩み寄るとマスクに包まれた顔を険しくした。
「小僧、お前にはすごいぐちぐち言いたい…が、その前に来客だ。」
来客…そう言われてドアの方を見ると
頭の部分だけが完全に犬の男が紳士的な声で「失礼するよ。」と入ってきた。
「保須警察署所長の、面構犬治さんだ」