第13章 I am a egg
『保須に居る2人から返事が、来ないの』
電話の相手はレイナ。
ちょうどかかってきた電話に、くるみが事の流れを説明したところだ。
《保須って今ニュースでやってるとこじゃん!ヤバくない?》
『ヤバい…ていうか、
たぶん破損した新幹線…デクくんが乗ってたやつだと思う。
ちょうど、保須を通過してるって言ってたし…』
《重症と軽傷者の名前一覧、さっき出てたよ?》
『うん…見たよ、緑谷出久って名前なかった…
ってことは、さ…』
《まさか!戦ってんの?!》
『かも…って…思ってる…』
レイナは唖然として何も言えなくなった。
テレビの報道が写す保須市は一面火の海だ。
時折遠くの方に、脳がむき出しになった怪物のようなヴィランが、空を舞っているのが見える。
画面は切り替わり、上空から街の様子を映し出した。
カメラのズームが映し出すのは2人の男。
ーーー野次馬?こんなときに?
アナウンサーの実況の声が部屋に響く。
『ヤバ……』
《だとしたら……ヤバいどころじゃないよ》
やっと吐き出した言葉に、くるみも喉を鳴らして唾を飲み込む。
《もう1人の、あの轟さんは?》
『轟くんからも…返事来てない、電話も…かけたけど、出ない…』
《轟さんも保須なんだよね…?》
『うん……』
明らかに震えているくるみの声に、レイナは眉をひそめた。
《くるみ、大丈夫…?今からそっち行こうか?》
『ううん、ごめん…大丈夫だよ。
心配しても…どうしようもないのは分かってるし…
何も出来ないし…
とりあえず、返信待ってみるよ…』
《そっか…うん、わかった。
また返事来たら、私にも教えて》
『ありがとうレイナ。電話、ありがとね…』