第13章 I am a egg
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職業訓練から3日ほどたった日の夕方。
くるみは、携帯の震えに体を起こした。
机の上に放置されたスマホを手に取ると、ポップアップに【メッセージ受信:緑谷出久】とかいてある。
最近毎日のように連絡をやり取りする友人の名前にくるみは画面をタップした。
【今から池袋に行くんだ、実戦訓練…らしい】
『池袋…』
テレビを付けコーヒーを入れながら、LINEを返す。
【保須って近い?】
すぐに既読がついて、返事が返ってくる。
【うん!というか、今ちょうど新幹線が保須の辺りだよ】
【え?そうなの!?】
轟も保須に居る。
それを知って居るくるみは、次の返信でそれを緑谷に伝えようとしたのだが、
いつもはすぐ付くはずの既読も、返事もない。
『電波が悪いのかな…』
携帯はベッドに置いたまま、コーヒーを啜る。
ほとんど見てもいない賑やかしのためのテレビは、ニュースを淡々と伝えて居る。
《続いて、今入ったニュースです。
中央本線品川行きの新幹線が、東京都保須市近辺でヴィランの攻撃を受け2両目、3両目が大破。
怪我人はヒーロー含め重症3人。軽傷39人。死者は居ません。
繰り返します…
中央本線品川行きの新幹線が、東京都保須市近辺でヴィランの攻撃を受け2両目、3両目が大破…怪我人は…》
『保須…市……』
くるみはテレビの前に駆け寄り、何度も繰り返されるその報道を聞き直した。
すぐに番号をタップし電話を耳に押し当てる。
コール音だけが虚しく響く中、
もう一個の番号にもかけるが、それも同じようにコール音のみで、通話には繋がらない。
留守番サービスセンターの音声ガイダンスが流れるスマホをダラリと垂れた手に握って。
くるみは
炎に燃え盛る保須の映像を見つめた。