第13章 I am a egg
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【デクくん、あんまり怪我しないようにね!】
そのメッセージにタハハ…と笑ってしまう。
心配してくれる縫井さんをなるべく安心させるようなメッセージを返して、駅弁を開けた。
僕のインターン先は山梨県だ。
オールマイトの師でもあるプロヒーローの「グラントリノ」。
検索にかけても出てこない謎の多いヒーローだけど、オールマイトの反応を見る限り相当にやり手なのだろう。
(たくさん学んで…早くこの力を自分のモノにしなくちゃ…!)
傷だらけの手を握りしめて意思を固くする。
今のまま、使いこなせないリスキー個性じゃダメだ…
1日でも、1分でも、1秒でも、無駄にできない。
みんなが当たり前に、息をするのと同じように行える個性使用。
僕はまだどこか、借り物の力を「使う」っていう感覚から抜けきれない。
そういえば、とノートをめくる。
新しく追記したばかりのページには
【縫井くるみさん】の見出し。
個性【ぬいぐるみ】
ぬいぐるみを操る個性。
一キロ範囲なら、想像通りに動かせる。
大きさは手のひらサイズから、大きくても30センチくらいまで。
山梨県に行くまでの間、この個性の可能性を考えて
こんど縫井さんに言ってみよう。
雄英に入って、このノートをバカにする人は居なくなった。
麗日さん、飯田くん、瀬呂くん…常闇くん…
僕の見解を聞いてくれる人も増えた。
でも、全部のノートを読んでくれたのは縫井さんが初めてで、こんなに興味を示してくれたのも、彼女が初めてで。
オメガ同士ってのもあるけれど、それ以前に、縫井さんは優しい人なんだ。
(かっちゃんも…きっとそこに惹かれて行ったんだろうな…)
新幹線の薄い机のせいなのか
ノートにペンを走らせる音が、いつもより軽く感じた。