第13章 I am a egg
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【頑張ってね!】
LINE画面の文字に頬が緩む。
【今から東京の保須に行くらしい】
揺れる車の中、何をするでもなくLINEを返した。
前の席に座るインターン先…エンデヴァーは戦闘中でもないというのに威厳のためだか知らないが火を揺らして座っている。
この事務所を選んだのは、他でもない
親父がNo.2たらしめる理由を、実際に己の目で確かめるためだ。
インターンという名目で帰宅すると、
すぐに保須に向かうと言い出した。
東京都保須市…
嘆かわしい事件が起きたのは雄英体育祭の真っ最中だった。
クラス委員長、飯田天哉。
代々有名なヒーロー一家の次男であるアイツの兄、
有名ヒーロー「インゲニウム」。
その兄が連続ヒーロー殺し・ステインに襲われ、
ヒーローとして再起不能な程の重傷を負ってしまったのだと、
緑谷から聞いたのはつい最近のこと。
(たしか…飯田のインターン先は…保須…だったか)
嫌な予感しかしねぇが、ヒーロー殺し…そう簡単に会えるもんでもねぇだろう。
飯田の顔を思い出して、自分を重ねた。
復讐で動いている奴の顔は…よく知っている。
つい最近までの、緑谷に出会う前までの俺だ…。
ポコン、と鳴った携帯のポップアップ
【保須かぁ…なんか物騒なところだけど、気をつけてね】
そうだな…緑谷と、くるみに会うまでの俺だ…。
直接俺を変えたキッカケになったのは、緑谷だ。
けれど、くるみも俺を支えてくれた。
誰にも言えなかった、過去を…受け止めてくれた。
初めて出会った時のことをふと思い出して、頭をよぎる2つの漢字。
ーー【運命】の番。
一目見た瞬間に、惹かれ合うこの世にたった1人のオメガ。
自傷気味に笑うと、親父が振り返って不審げにこちらを睨んで来た。
こいつに何と言われようと、
愚かだと笑われようと、関係ねぇ。
俺が愚かしい事は、俺が一番わかってる。