第11章 I am a liar
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「一緒に帰れねぇか?」
そんな声に顔を上げると机の横にいたのは轟くんだった。
「え?あ、うん。大丈夫だよ?」
リュックサックに荷物を入れて、背負うと
何も言わずに歩き出す轟くん。
カバンに揺れているキーホルダーは縫井さんのものと同じで
それが何故か切なかった。
「最近」
そう声をかけると、轟くんはこちらに視線だけを向ける。
「縫井さんと、どう?」
ヒートの後、縫井さんとLINEのやりとりは結構頻繁にしている。
けれどいつも、かっちゃんの話題や昔やっていたゲームの話で
轟くんと縫井さんが今どんな感じなのかは聞けてない。
変に聞いて、轟くんの気持ちに気づいてもいけないし…
浮ついた話に縁のなかった僕は、こういう時どうしたらいいのかわからない。
「…俺の気持ちは気付かれてねぇ」
短く返ってきた答えは低く響いた。
「今日は、爆豪と帰るらしい」
「かっちゃんと!?」
「中間試験が近けぇから、勉強教えてもらうって、はしゃいでた
今から見に行こうと思ってる」
「いまか!?ら!?」
驚く僕は、変なポーズで思わず立ち止まったまま固まってしまった。
サクサク先を歩いていく轟くんに小走りで追いついて、
一呼吸置いて、なるべく笑顔をつくる。
「見に行くって…二人が一緒にいるところに?」
「あぁ、近くのファミレスらしい」
この辺のファミレスは一店舗だけだ
そこまで、あと徒歩3分もかかりはしない…
いや、言ってしまえば、看板はもう見えている。