第10章 I am running
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ポコん、と煩い電子音が鳴る。
ノートに走らせていたシャーペンを回しながら、片手で適当にタップすると
文字の上からでもキャンキャンと尻尾を振ってるみてぇなLINEが一通届いていた。
それに続いて、本当に尻尾振ってる犬のスタンプが送られてきて、思わず笑っちまった。
【爆豪くん!こんばんわ!!!】
「コイツどんだけ「!」使うんだよ」
口ではそんなことを言っているが、その口元は緩やかに上向きに孤を描いている。
【文字でもうっせぇな】
返せばすぐに付く【既読】のマーク。
何故か心に広がる安堵の色
こいつはオレの事を好きだのなんだの言ってりゃいい。
俺のことだけ見てりゃいい。
【だって!爆豪くんとLINEできるの
夢みたいで!!!!】
また1個増えた「!」マークにフッと失笑する。
ほらな、どいつがこいつの事をどれ程好きになろうと、こいつの気持ちのベクトルは、こちらだけを向いている。
別にこいつと連絡先を交換したかったわけじゃねェ
オレの知らない何かをデクが知っとんのが腹立たしいだけだ。
あの半分がくるみのことが好きなのはほぼ確定だ。
本人は気づいてねぇのかも知んねーが、女にもらったモンを後生大事にしてるんは、そういうことだろう
轟のカバンについているクマのぬいぐるみを思い出す。
と同時に、オレはまだあいつと出かけたことがねぇ事を思い出した。
一緒に帰った事はあるが、半分みてぇに放課後出かけたことはねぇな…
少し悩んだ後に、爆豪は携帯を手にとって
でもまた、机に置きなおした。