第10章 I am running
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くるみが待ち合わせに遅れるのは初めてで、画面を確認すると、
待ち合わせ時間は10分前だった。
『轟くん!轟くん!!』
俺を呼ぶ声がして、
走ってきたのは、息を弾ませていつもより慌ただしい彼女。
ベンチから立ち上がろうとする俺の胸元に飛び込んできて、抱きついてきた。
大きめの制服のせいで隠れていた柔らかな体が押し付けられる。
「くるみ…!?」
『轟くん!どうしよう!』
くるみは俺の胸元に顔を埋めたままくぐもった声で小さく叫んだ。
『爆豪くんに…』
「爆豪に…?」
勢いよく顔が上がる。
泣き出しそうなその顔は様々な感情が蠢いていて、よく分からない。
『爆豪くんに!
連絡先聞かれちゃった!』
辛い恋だと気付いた時には、もう手遅れで…
コロコロと笑う彼女ごと、この世界が灰色になっていくようで…。
(なんで…応援するなんて言っちまったんだろうな…)
後悔する頃にはもうとっくに遅くて…
だからといって、どうすることもできなくて…