第10章 I am running
轟くんが自分の気持ちに気づいてしまったら、どうなるんだろうかと僕は心配していたけれど。
轟くんはどこかスッキリとした面持ちで、やっと自分の気持ちの落とし所後わかったというか、自分の気持ちに名前がついて落ち着いたという雰囲気だった。
その日の夕方、縫井さんの家に行くと
チャイムを鳴らしてすぐ、鍵が開いた。
『デクくん!お疲れ様!』
「あれ?なんか…元気だね」
ここ最近の縫井さんといえば、ドアを開けるまでに五分以上かかって、何も着けていない身体の上から適当に羽織っただけのロングTシャツとか、パーカー姿で
目には決して良くなくて…。
いつもグチャグチャで疲れ果てて居たのだけれど。
今日出迎えてくれた彼女は、まだ疲れは残って居そうだけれど、服もちゃんと着ていて、ドロドロじゃなくて、
なんと言うか、普通だ。
『昼にね、ヒートが終わったの!
デクくんのおかげ!ありがとう!』
お礼にケーキ買ったから食べて行ってよ。と手を引く彼女に引かれるがままキッチン横の小さなテーブルの前に座る。