第10章 I am running
「縫井さんが…かわいそうで…見てられないよ…
でも、ヒートも今日までだから…今月はどうにか乗り越えたかな」
あれから数日…くるみは本当に薬の効きが悪いようで、部屋を一歩も出れずに一日中ヒートと戦っているのだと、緑谷から聞いた。
「僕もオメガだけど、一応男だから…
ずっと一緒にはいられないし
食べ物と飲み物だけ置いて、様子だけ確認して帰ってるんだ…
縫井さん、辛いだろうに
いつも笑って…『爆豪くんのネクタイがあるから大丈夫だよ』って…
あんな一個じゃ、巣作りできないし、匂いも薄いだろうから…本当は無意味で、何の慰みにもならないのに…」
話しながら、轟の顔が曇っていくのを感じた緑谷は、轟の顔をまじまじと見つめる。
「大丈夫…?なんだか、調子が悪そうだけど…」
「あぁ……実は、
最近調子が良くねぇんだ…
くるみに言われて病院にも行ってみたが、どこも悪くねぇって言われた…」
「どこか痛いとか?気持ち悪いとか?」
「心臓のあたりが、痛てぇ…時々突然ズキズキしたり、締め付けられるみてぇに痛くなったり…
呼吸が苦しくなる…」
「轟くん………それって……」
そこまで言いかけて、緑谷は口を噤んだ。
これは、轟くんが気付いたらダメなやつだ…
縫井さんは、かっちゃんが好き…なのに轟くんがこのことに気付いたら………
「それは、恋☆」
唐突気現れた金髪に、緑谷は目をガン開いた
「恋……、俺が、くるみを好きだってこと…か?」
「だよね☆」
くるみって人が誰かしらないけどね☆と、追記して最も謎の多いクラスメイト、青山優雅は爆弾だけを置いて立ち去っていく。
「緑谷…俺は……くるみのことが、好きなのか」
とんでもないことに気付いてしまった友人に、僕はただ頭を抱えることしかできなかった。