第2章 I am happy
くるみの後ろから人波がやって来て、必然的に押し付けられた体を、爆豪は拒否するでもなくただ受け止めた。
くるみが息ができないという表情で、爆豪を見上げる
バチっとあった視線のまま、そらすことも、そらされることもなく…
頭上約20センチの距離感で見つめ合うと
くるみはこれ以上赤くはならないだろうというほど赤くなった。
同時にフワリと香る、オメガのフェロモン…
蜂を誘う花のような香りに、爆豪は体が熱くなるのを感じた。
アルファである自分にとって、発情期を迎えた後のオメガのフェロモンはたとえ微量であっても、性的な誘惑をするには十分。
爆豪は、そんな視線と香りに耐えきれず
くるみの目元をバチン!と音がするほど強く塞ぐ
『ひぅ…!』
いきなり暗闇に包まれた視界の中で、くるみはバタバタと手を動かすが
「動くな」と爆豪に言われて大人しくなった。
(調子狂うんだよ…)
爆豪はぷい、と出口に視線を向ける。
さっき身じろがれた時に押し付けられた柔らかな2つの丘の感触が未だに体に残っている。
綺麗な色の瞳で見つめられた時に、感じた熱も
未だ、体の芯を燻し続けているし
告白されたのは別に昨日が初めてじゃない。
それなのに、やけに意識してしまうのはこの女が今までの女よりツラ構えがいいせいだろうか。
『あの…』
胸元で小さく声がして、目を塞いでいた手を離すと
長い睫毛に隠れていた瞳が眩しそうに何度か瞬いて、恐る恐る上目遣いに見上げて来た。
『ごめんなさい…、足手まといになってるよね…』
「あ?」
『爆豪くん1人なら、逃げれたでしょ?』
「…べつに、1人でも同じだ
めんどクセェこと考えんな」
吐き捨てると、くるみは『そっか…うん…ありがとう』とぎこちなく笑う。
んとに…調子が狂うな