第9章 I am lucky
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ピン、ポーン…と安っぽい音がして
2分くらいたってから、布が引きずるような音がドアの奥からした。
『…だれ……』
ドアも開けずに響く声は、掠れていて、でもそれは確かに縫井さんの声で…。
僕はなるべく優しく、明るい声でドアに向かって話しかけた。
「緑谷出久です!デク!
ごめん!いきなり…えっと、その…無断で休んでるって聞いて…あの、ノートもわたしたくて…」
なんて、まとまらない言葉を言っていると、ガチャと鍵の開く音がした。
(入っていいって…こと、かな…)
恐る恐る扉を開くと、
汗でドロドロの縫井さん。
彼女は壁にもたれかかって、玄関先に崩れて倒れている。