第9章 I am lucky
『小学生の…爆豪くん…』
その瞳は輝きを増し、オメガである緑谷でさえ、その輝きに目を奪われ頬を染める
「よかったら、今度貸すよ?」
『いいの!?
じゃあ、家近いし、帰りに借りていい?』
「近いの?」
『折寺なの、去年出来た…レンガのアパート。
爆豪くんが近いって言ってたから近いはずなんだけど…』
「あ、あそこなんだ!うん、近いよ
じゃあ今日の帰りにでも渡すよ」
『嬉しい!ありがとう!』
くるみはパチパチと両手を叩いて、喜んだ。
その姿を見て、轟は胸の奥がジリジリと熱されるような感覚を覚える。
ーー爆豪くんのことはなんでも知りたい…だって好きなんだもん。
くるみが以前言っていた言葉が、脳内で思い出されて胸を締め付ける。
それがきっかけで、自分だって、くるみと話すようになったのだ。
「知ったからって…意味ねぇだろ…」
「轟くん…」
緑谷の戸惑った声に、自分が思ったことを口に出していたことに気づいた。
息を飲んでくるみを見つめると、ショックを受けている顔はしていたが、すぐにクニャリと笑顔を作った。
『…確かに、そうだよね
でも…知りたいの』
ーーー好きだから。
彼女はまたそう言った。
哀しそうな顔で。
言わせたのは俺なのに
傷ついたのも俺だった。