第9章 I am lucky
いつの間にか話題は個性の話に移っていて、
轟は緑谷の「ぬいぐるみ?!」と少し興奮した声に反応して顔をあげる。
「詳しく聞いていいかな!」
『そんな…、なんか、全然興味持ってもらえるような個性じゃないんだけど…』
くるみは照れ臭そうに笑うとポケットの中からぬいぐるみを取り出した。
いつものクマのぬいぐるみだ。
薄いピンクのフワフワとした手触り、薄い灰色の刺繍糸で縫われた目。
可愛らしい形態のソレはゆっくりと立ち上がる。
『一キロ範囲なら、想像通りに動かせるの。
でも大きさは手のひらサイズから、大きくても30センチくらいまで…』
「無機物は全部?」
『ううん、ぬいぐるみだけ、綿が入ってるようなフワフワのやつ』
ね?没個性でしょ?とカツを噛むくるみの前で、緑谷は唇に手を当て、
「いや…そんなことないよ…その個性、使い方によっては強いよね…狭いところも入れるし…衝撃にも強い…あーでも、ぬいぐるみの視界が分かるわけじゃないのか…でも、カメラを搭載しておけば…ブツブツブツ…」
と、いつものように不気味に呟き始める。
そんな緑谷にくるみはクスクスと笑った
『もしかしなくても、デクくんってヒーローオタク?』
「ひゃ!う、うん……なんか、色々…グッズとか集めたりしてるうちに、そんな感じになっちゃった…かも
もはや趣味っていうか…クラスメイトの個性とかも、ノートにまとめたりしてて…」
『ノート?』
「うん!あー教室にあるや…かっちゃんの個性は小学生の時からまとめたのが家に…」
爆豪のあだ名を聞いた途端、くるみの体が前のめりになった。