第2章 アイシテイルカラナカセタイ
「え……何の事…ですか?」
顔を寄せたファイヤーエンブレムの迫力に彼女はもう顔面蒼白だ。
……ちょっと気の毒。
「貴女のパパとお電話でお話させてもらったわー。
実はアタシ、パパと知り合いなのよォ。
ホラ、経営者仲間ってヤツ。」
「パパと……」
「貴女のパパね、
娘のしたコトを見逃してくれるなら
アポロンメディアへこれまで以上の融資を約束する……ですって!」
ウオッ……流石ファイヤーエンブレム、頼りになり過ぎッ!
「さあ……お嬢さん。
………どーする?」
もう裏声じゃなかった。
ドスの効いたファイヤーエンブレムの声に、彼女は項垂れて遂にバニーの右腕を手放した。
「さ……タイガー。
さっさとハンサムを連れてって頂戴!
ヒーローはそんな姿を見せちゃダメよ!
コッチはアタシとバイソンで穏便に片付けちゃうから。」
「……分かった。
悪いな、ファイヤー。
ホント……助かったぜ。」
「イイのよぉ。
今度、お礼にタップリお尻を揉ませてもらうからッ♥」
ちょっとだけ背筋がゾクッってしたけどさ……
オレはバニーの身体を支えながら出来るだけ目立たないようにバーを後にした。
「こて…つ……さ…
ど…して……ココ…に?」
朦朧とはしてるけど、一応バニーの意識がちゃんとある事に胸を撫で下ろす。
「待ってな、バニー。
スグに楽にしてやるから!」
このホテルに部屋を取るか?
……いや、ダメだ。
それこそ誰に見られるか分かったモンじゃねえ。
オレはメインエントランスを避けてホテルを出ると、スグにタクシーを拾った。
ココからなら、バニーのマンションの方が近い。
運転手に行き先を告げて走り出したタクシーの中で、オレは呼吸を荒げ始めたバニーの身体をずっと抱いていたんだ。