第2章 アイシテイルカラナカセタイ
「どうも!」
彼女の背中から声を掛ける。
隣に居るバニーの様子をチラッと確認すると、既に意識が朦朧としちまってるみてえだ。
「貴方……ワイルドタイガー……」
あからさまに気不味い顔した彼女に対し、オレはウインクしつつ……
「オレの相棒が迷惑掛けたみたいで申し訳無いッス。
ホント、女性を前にしてこんな酔っ払うなんて失礼なヤツですよね-。
スイマセン……
オレが責任持って連れ帰りますから……」
そう言ってバニーの左腕を担いだ。
「待って!」
だけどどうやら彼女も引く気はないらしい。
オレの行動を阻止して引き留めるように、バニーの右腕を絡め取る。
「バーナビーは今夜、私と約束を……」
「……約束?」
低い声と鋭い眼光で問うオレに、彼女はビクッと身体を強張らせた。
それでもバニーを諦められないんだな。
「私の父は……アポロンメディアの…スポンサーなのよ。
だから……私の機嫌を損ねない方が……」
声と身体を震わせて、必死の形相でオレを睨み付ける彼女。
ああ……可哀想だなァ。
愛する人に愛されたい。
そんな当たり前の願望に囚われて狂っちまった彼女の姿に、今のオレがどれ程幸せなのかを思い知る。
だから余計に、バニーを彼女に渡すワケにはいかねーんだよ。
さて、どーしたモンか……
スポンサー様のご機嫌を損ねれば、またロイズさんに怒られちまうよなァ。
オレは慣れてっからイイけどさ、バニーは守ってやりてえし……
なんて考えていると
「お嬢さん。
少しばかりオイタが過ぎたみたいね。」
いつの間にかファイヤーエンブレムが彼女の肩にそっと手を乗せていた。