第21章 背徳のシナリオ ~後編~
「虎徹君の顔を見たら決心が揺らいじゃいそうだから」と言ったさんは、既に辞表も出して明日からは出社しないそうだ。
「この事、バーナビーから虎徹君に伝えてくれる?
私からはちょっと言えないや。
嫌な役を押し付けちゃってごめんね。」
そしてさんは、最後まで笑顔のままで帰って行った。
さんを見送ってからオフィスに戻った僕は、虎徹さんが取材から帰るのを待って飲みに誘い、そこでさんからの伝言を伝える。
怒るかな…とも思っていたけど、虎徹さんは唯一言「そっか……」って呟いただけだった。
その後は
「俺、まーたフラれちゃったわー!」
なんて戯ける虎徹さんと2人でいつも通りに飲んで……
やっぱり虎徹さんが酔っ払って……
そして今夜も僕のマンションへ。
「俺はねッ…もおねッ……
バニーちゃんが居ればそれでいいのッ!」
「またそんな適当な事を言って……」
僕がクスクスと笑うと、虎徹さんはいきなり僕の頬を両手で挟んで顔を寄せた。
「マジで!!
だってバニーちゃんはずっと俺の側に居てくれるンだろォ?」
「ええ……勿論。」
「じゃあバニーでいい!
いや、もおバニーじゃなきゃダメー!」
………完全に酔っ払ってるな、コレ。
態々こんな事を言うなんて、平気なフリして明るく振る舞ってても、やっぱりさんとの別れがかなり堪えているんだろう。
「ばにぃ………」
トロンとした目付きの虎徹さんの顔が近付いてきて……
キスされる?
「ZZZZZ………」
そう思った瞬間、虎徹さんはドサッと僕の身体に倒れ込み、そのまま眠ってしまったんだ。