第21章 背徳のシナリオ ~後編~
「そりゃそうだよねェ。
あのT&Bだもん!
お互いのプライベートには無関心です…なんて訳ないよね!
ホント、そんなT&Bの間に
こんなおばちゃんがズカズカ乗り込んじゃって
もう自分が恥ずかしいよ……全く!」
自身を卑下しながらもさんの目は優しく僕を見つめてる。
何か言わなくては……そう思っても声が出ない。
だって…………こんな展開、『僕のシナリオ』には描かれていないんだ。
今度は僕の方が無言で、そんな僕を宥めるようにさんの言葉は続く。
「バーナビーのおかげ……って言うのもヘンなんだけど
私ね、決心がついたんだ。
アポロンを辞めて、息子が行く大学がある街へ行くよ。
ホラ、そうすれば仕送りしなくていいしさ。
仕事はまたそっちで見つければいいし!」
「さん………」
人生を左右する大きな決断であるにも関わらず、何でも無い事のように明るく話すさんを見て、僕は自然とその名を呼んでいた。
僕の中ではもう「貴女」としか呼ばないつもりだったのに……。
「あはは……
本当はもうずっと迷ってたんだァ。
ここで虎徹君に出会って、虎徹君の優しさに甘えちゃって……
しかも憧れのBBJともお近付きになれちゃったからさ、ふふ。
だからね……中々決められなかったんだけど、
今回の事が丁度いいキッカケかな…って!」
きっと、今………僕は泣きそうな顔をしてるんだろう。
さんはちょっとだけ困ったようにクシャッと柔らかく微笑んで言った。
「ありがとね……
この街で過ごした時間、とっても楽しかった。
こんなおばちゃんに構ってくれるなんて、
虎徹君もバーナビーも流石スーパーヒーローだよね!
それに……」
そしてさんは少し僕の方へ顔を寄せて………
「ワイルドタイガーとBBJの両方に抱かれた女なんて
世界中で私だけでしょ?
うふふ……」
結局僕は何も言えないまま、さんに向かって小さく頭を下げたんだ。