第21章 背徳のシナリオ ~後編~
「ごめんね。
急に誘っちゃったりして。
スケジュールとか、大丈夫?」
「構いませんよ。
今日は一人だったので、どうしようかと思っていた所です。」
「うん。
虎徹君は夜まで不在だって聞いたから。」
正直、僕は驚いていた。
まさか昨日の今日で、さんの方からやって来るとは。
しかも虎徹さんに会いに来るならまだしも、僕を誘うなんて……
この女は何を考えている?
さんと向かい合って座ったカフェのテーブル席。
僕は周りの客からは目に付きにくい、奥まった席を選んでいた。
「昨夜は申し訳ありません。
貴女を傷付けてしまいましたよね?」
先ずは心にも無い謝罪をする。
無言のままのさんに、一つ小さく息を吐き僕は言葉を続けた。
「貴女は僕ではなく、虎徹さんに会うべきなんじゃないですか?
虎徹さんと話して、許しを乞うべきでは?
勿論、僕を悪者にして貰って構いませんから。」
僕を悪者にして許しを乞えば、それはそれでこの女の醜悪さが強調されるに違い無い。
それだって僕の描いたシナリオの一部なんだ。
だけどその後、さんの口から出た言葉に………
「ごめんなさい……バーナビー。」
僕は絶句した。
どうしてさんが『僕に』謝るんだ?
「私の方こそ、バーナビーに不愉快な思いをさせてたよね?
全然気付かなくって……ホント、ごめんね。
虎徹君は私を受け入れてくれたけど
虎徹君と私だけが愉しくて、
バーナビーが苦しんでたら意味が無いよね。」
「………何を言って……?」
何だ、この展開?
…………さんは『僕のシナリオ』に気付いているのか?
自分でも分かる程に血の気が引いていき、今の僕の顔は青褪めているだろう。
それとは真逆に、さんはカラカラと陽気に笑った。