第21章 背徳のシナリオ ~後編~
…………こんなもんかな?
余りダラダラと釈明した所で、虎徹さんは録に聞いていないだろうし。
「悪ィ………
俺、帰るわ。」
「虎徹さん!
本当に僕がッ…」
「いや、いいんだ……バニー。
お前が無理矢理した訳じゃねえんだろ?」
「はいッ!
それは勿論!」
「じゃあ仕方ねえよ。
何か……逆にすまなかったな。」
「でも…………」
「今は一人になりてぇ。
バニー………
また、明日……な。」
今にも泣き出してしまいそうな笑顔を浮かべた虎徹さんはそのまま踵を返し、暫くすると玄関を出て行く音が聞こえた。
僕が描いたシナリオ通りの展開に高揚感が沸き上がる。
そして立ち上がり振り返って見れば、さんはベッドの上で胎児のように身体を丸めガタガタと震えていた。
もう茶番は終わりです。
「貴女も帰った方がいいんじゃないですか?
出来の良い息子さんが待っているんでしょう?」
僕の冷ややかな声にぎこちなく上体を起こしたさんの目は……
驚愕、絶望、憤怒、軽蔑……
何とも形容し難い色を浮かべている。
自分でも酷い男だと自覚はしていますよ。
蔑むならどうぞ御自由に。
高が貴女一人の感情で、僕がここまで造り上げて来たBBJのパブリックイメージが壊れる事は有り得ませんから。
「シャワー、使いますか?
ああ、バスルームまで僕が抱いて行けばいいのかな?」
未だ動かないさんに向かってトドメの一言。
これで流石にさんも、僅かに残った僕への期待が打ち砕かれたようだ。
慌てた動作で散乱していた衣服を掻き集めると、ベッドルームを飛び出す。
そしてレストルームに立て籠り、その後直ぐに帰って行った。