第21章 背徳のシナリオ ~後編~
「ね、さん。
どうします?」
「え…?
どう……って…」
僕がジリッと身体を寄せた分だけ、さんは後退った。
その詰められない距離を僕の右腕が一気に突破する。
「このリップ、着けてきてくれたんですね。
………嬉しいな。」
人差し指でさんの唇をゆっくりなぞってやれば、その心の中で起こっている葛藤が僕にも伝わって来るようだ。
「ダメ……バーナビー……」
「ダメ?
何が……ダメなんですか?」
「だって……虎徹君が……」
「ああ……
何かを期待しちゃってる?」
「………ッッ!」
図星を突かれて真っ赤に染まる頬。
ホント………容易過ぎて張り合いが無い。
「貴女、僕のファンだったんですよね?
そのBBJに求められて嬉しくない?」
「でももう……私は……」
「貴女はもう、虎徹さんの……だから?」
ここで僕はワザとらしく哀し気な表情を作ってみせた。
どんなハンサムビームよりも、この女にはこういったスタンスが1番効果的なハズだ。
「ね……僕が悪いんです。
僕が淋しくて、甘えたくて、さんを求めてしまったから。
貴女は何一つ罪悪感を持つ必要はありません。
勿論虎徹さんにも言いません。
僕とさんだけの特別な秘密です。
それでも………ダメですか?」
「バーナビー……」
「ねえ……ダメ?」
「…………。」
ホラ、堕ちた。
後は貴女が『自分の選択で僕に抱かれた』という状況を作り出さなくては。