第20章 kiss the glasses 後編
「あの…このワンピースも……」
「ハイ。
Miss.シーモアのお店で選んで頂いたんです。
タイガーさんも『バニーが好きそうだ』って……」
そうだ。
確かにあのブティックはファイヤーさんが経営するヘリオスエナジーのグループ企業だったハズ。
それに気が付けば、僕の心の中に渦巻いていた靄がどんどんと晴れていった。
そうなると残るのは、さんが『僕に相応しい女性になりたい』と言ってくれたという歓喜だけ。
僕の隣で照れて俯くさんの顎に指を掛けて上向かせる。
「ね……ファイヤーさんにどんなコトを教わったんですか?」
「え……?」
「このワンピースもメイクも、とってもお似合いで可愛らしいですけど……
それだけじゃないでしょう?」
「あの……どんな…って……えーと…」
「『飲むだけで終わっちゃダメ』なんて……
さん自身の言葉じゃないですよね?
ファイヤーさんに教わりましたか?」
真っ赤に染まるさんの頬。
ああ、図星なんですね。
きっととても恥ずかしかっただろうに、言われた事を忠実に熟してまで僕に好かれたいと望んでいるさんが堪らなく愛おしい。
そう思ってしまえば、もう我慢なんて無理ですから。
僕はそのままさんを抱き上げると、スタスタとベッドルームへ向かう。
「え…あの……バーナビー…さん?
お酒、飲むって……」
「ワインなんていつでも飲めます。
僕は今直ぐにさんを抱きたい。」
「ええー……」
そんな困った顔しても可愛いだけですよ、さん。
もう今夜は逃がさないですからね。