第20章 kiss the glasses 後編
自分の部屋でワインを飲む。
さっさと酔って眠ってしまいたいのに、酔う所か神経はピリピリと研ぎ澄まされていく。
何も考えるなと自分を戒めてみるけれど、ついさっき目にした虎徹さんとさんの姿が頭から離れないんだ。
さんのあの笑顔を、虎徹さんが独り占めにしてた。
虎徹さんを恨むのは筋違いだ。
さんに選ばれなかった自分を責めるべきなんだ。
そんな事は痛いくらいに分かっているのに、どうしても心の中に黒い靄が拡がっていく。
「…………クソッ。」
小さく悪態を吐いたその時、僕のスマートフォンが振動した。
画面を確認してみると、それは虎徹さんからのコール。
出るのを躊躇う僕にはお構い無しで、コールはしつこい程に鳴り続ける。
1つ息を吐いて、僕はそのコールに応答する事にした。
「………何ですか?」
刺々しさも顕わに問う僕の声。
その後、暫くの静寂の後に聞こえて来たのは………
「アノ…イキナリ……ゴメンナサイ…」
さんのか細い声だった。
「え……さん!?
どうして虎徹さんの電話から……?」
「私、バーナビーさんに自分の電話番号お伝えしてなかったから……
いきなり知らないナンバーから掛かってきても
バーナビーさんは出てくれないかな……って。」
………まあ、そうですね。
至極当然の危機管理です。
「だから虎徹さんの電話で?」
「………ハイ。」
という事は今もまだ、虎徹さんと一緒に居るって事か。