第20章 kiss the glasses 後編
それから2日経っても、進展は何も無かった。
虎徹さんは「俺に任せろ」って言ってくれたけど……
一体どんな対策を行っているのか、それすらも僕には分からないままなんだ。
こんな時に限って、珍しく出動機会も無くて……
いや、勿論ヒーローが出動するような事件も事故も起こらないっていうのは良い事だ。
でもそうなると、僕にはさんに会える術が無い。
気軽にラボへ顔を出して、何も無かったように当たり障りの無い会話をするとか……
そんな虎徹さんみたいな図太い神経が、今の僕は心の底から羨ましい。
今日も虎徹さんは定時になると「お先にー!」なんて、さっさとオフィスを出て行った。
いつもは僕がウザがっても「バニー、飲みに行こーぜ!」とか強引に誘って来るクセに。
さんへの届かない想いにも上塗りされるように、僕は淋しくて堪らないんだ。
これまでの僕だったら、こんな感情を持つ事は有り得なかった。
他人と深く関わり合うなんて何よりも苦手だったし、それでも誰かと繋がりたいと思った時には簡単に呼び出せる女性は数え切れない程居た。
その彼女達は、僕から連絡すれば全ての予定を投げ出して直ぐBBJに抱かれにやって来る。
ルックスも品格も申し分ないセレブな女性達とベッドの上で耽るセックスは僕を満たしてくれた。
勿論僕も彼女達を充分に満たしてあげていたつもりだ。
『バーナビーとのセックスを知ったら、他の男となんか寝られない』
何度、そう言われただろうか。
僕はそれで充分だったんだ。
自分とは違う体温を感じ、唯々性欲を解放する。
それだけで満たされている……気がしてた。
でも僕は気付いてしまった。
さんと出会って、初めて気付いたんだ。
僕が満たされていると感じていたのは身体だけ……。
本当に好きな人が現れると、こんなにも『心』が満たされるんだって。
だから今直ぐ………………さんに会いたい。