第20章 kiss the glasses 後編
「あのですね………
男から『僕の部屋で飲み直そう』って誘われた場合は
飲んで終わりじゃないんですよ。
男はその先を、誘っているんです。
…………その先って、分かります?」
まるで子供を諭すみたいにゆっくりと語る僕をじっと見ていたさんの顔が急にボンッと真っ赤になる。
流石に年齢が年齢だけに、ソコは理解してくれたようだ。
そしてワナワナと唇を震わせ目を泳がせるその表情は、僕に対して憤っているというより、そんな事にも気付かなかった自分を恥じて責めているんだろうな。
正直、僕だってさんがここまでピュアであるのにはビックリだけど………
でも……それを喜ばない男は居ませんからね。
「だから……ね………」
もう一度、BBJ史上最強のハンサムビームを炸裂させながらさんに覆い被さろうとした僕の身体を
「ごめんなさあああいいッッ!!」
彼女の細い腕が力の限り弾き返した。
「……………え?」
「私ッ……ホントッ…
そういうの知らなくてッ……
全然そんなつもりじゃなくてッ……
ホント…ホントに……ゴメンナサイ!!」
そう言ってドタバタと立ち上がったさんは、僕に向かい大きく頭を下げると、振り向きもせず猛ダッシュで部屋を出て行ってしまったんだ。
尻もちを着いたまま、固まって動けない僕を残して……。