第20章 kiss the glasses 後編
さんの手からそっとワイングラスを奪い取り、床に置いてあるシルバートレイの上へ。
きょとんと僕を見上げるさんの髪を優しく撫でてから、その細い首筋へ顔を埋めた。
これまでの経験から知っている女性の首筋から当然のように漂ってくる筈の香り……
そんなものは微塵も感じられない。
感じるのはさんの素肌から放たれるリアルな体臭。
それが僕には酷く甘くて、シャネル N°5なんかより余程興奮してしまう。
そのまま体重を掛けて、さんをトスン…と押し倒し…………
「何するんですかッッ!?」
さんの鋭い声に驚いて上体を浮かせて見れば、さんは驚いた顔をして僕をキッと見上げていた。
いや、これは僕の方が驚く場面ですよね?
「何って……」
どう伝えればいいのか、上手い言葉が浮かばない。
「えーと………
さんは、どうして僕の部屋へ?」
「だって……
バーナビーさんが飲み直そうって誘ってくれたから……」
…………………ちょっとコレ、本当にマズイ展開かも。