第18章 Tintarella di luna 後編
暫く経ってもコーヒーへ手を着けないワイルドタイガーに苛つきを感じ、ならば私がこの場を去ろうと一気にロシアンティーを喉に流し込んだ時……
「バニーがね……言ったンですよ。」
唐突に掛けられた言葉に驚き目の前の男に視線を向けると、ワイルドタイガーはどうしてか柔らかく微笑んでいた。
私のリアクションなど待つ気もないのだろう。
ワイルドタイガーは滔々と言葉を続ける。
「管理官はどうして自分が受け入れたんだろう……って。
酔っ払って眠っちまってる俺に突っ込むコトだって出来たハズなのに
どうして自分の方に……って。
そういうセクシャリティーなのかもしんないけど
でも俺は………」
「Mr.鏑木。
そういった話をここでするのは如何なものかと……」
ゾワゾワと全身に虫酸が走る。
このままこの男の言葉を聞き続けてはいけないと直観したのに、私は動けないでいた。
「アッ……そうッスよね。
けど、コレだけ!
コレだけは言わせて下さい。
俺もバニーも、同じ気持ちなんでッ……」
「………何でしょう?」
この男が何を言い出すのか、怖くて堪らない。