第18章 Tintarella di luna 後編
あの夜以来、私の生活は特に何の変化もない。
その後ワイルドタイガーとBBJの関係性がどうなったかなど、私の知る由でもないしな。
それでもここ数日で放映されたHERO TVを見る限り、T&Bは以前と変わらぬ姿を披露していた。
少し厄介な仕事を片付け、私は久し振りにあの喫茶店へ足を運ぶ。
私1人に対してならば店主の態度は無愛想なままだ。
注文も聞かれないままに運ばれてきたロシアンティー。
その芳香にひとつ息を吐き、カップに口を付けようとした瞬間……
「よお!コテツちゃん!」
今では聞き慣れてしまった店主の陽気な声が店中に響く。
カップを持った手を下ろす事もせず私が入口に目を向ければ、そこには私を見咎めて含羞むようなワイルドタイガーが立って居た。
「あー……
お久し振りです、ユーリさん。」
そう言って近付いて来たワイルドタイガーは、相も変わらず許可を得る事無く私の前へ腰を下ろし
「あッ……マスター!
俺、コーヒーね!」
などと呑気な声を上げる。
一体何を考えているのか?
熟々、不思議な男だ。