第18章 Tintarella di luna 後編
両者にとって好都合の行為が終わってしまえば、もうここに用は無い。
狼狽えたままのワイルドタイガーも迎え入れて、3人が寄り添い甘いピロートークを交わす関係でもあるまいし……。
私は早々に立ち上がると、直ぐに自分の中に在るモノを己の指で掻き出し、着て来たスーツで身を固めた。
今の今まで全裸で乱れていた姿など想像出来ぬよう、一分の隙も見せぬように。
ベッドの上にはワイルドタイガーとBBJが腰を下ろしている。
2人共が何か言いた気で、何か言わなくては……という焦燥感がビリビリと伝わったが、特に欲しい言葉など無い。
欲したモノは思う存分戴いたのだから、私の方こそが礼を言うべきなのかもしれないな。
「今夜はとても楽しかったですよ。
ありがとうございました。」
振り向き様に、僅かに笑みを浮かべてそう言った私は、一度も立ち止まる事無くワイルドタイガーの部屋を後にした。
誰も居ない深夜の住宅街に靴音を響かせながら私はふと独り言ちる。
「ああ……アレは申し訳無い事をしてしまったな。」
私の脳裏に思い浮かぶのは、ベッド脇の床に垂れ落ちたままにしてきた大量の精液。
私の中から掻き出したモノも、私自身から噴き出したモノも、始末せず出て来てしまった。
次にワイルドタイガーに会えた時にでも詫びておこう……
そう考えながらも『次』があるのか……と喉を鳴らす。
深夜の住宅街………
響く靴音に、私の低い笑い声が上塗りされていった。