第18章 Tintarella di luna 後編
「貴方はMr.鏑木に劣情を?」
「………いいえ。」
私を睨み付けるグリーンアイが、図星である事を肯定している。
ああ……劣情と表されるのが気に入らないのかもしれないな。
そんな邪な想いではない、もっともっと清らかなのだ……と言いたいのだろう。
まあ、この男くらいの年齢では良くある浅はかで拠り所の無い感情だ。
だが今は、その若さ故に下半身から湧き上がるドス黒い欲望に抗うのが必死だという様相を見せている。
「では、私がお相手をしても?」
「は……?」
ワークパンツの股間をスルスルと擦ってやりながら、私の顔に掛かる自身の前髪をフワリと掻き上げてBBJへ顔を寄せた。
「私では役者不足でしょうか?
貴方のココは、私では治まらない?」
「ペトロフ管理官……
貴方は虎徹さんと愛し合っているんじゃ……」
………吐き気がする程に真っ直ぐなのだな、BBJ。
ヒーローとしては好ましい限りだが、今の私にはその清廉さが薄気味悪い。
「いいえ。
私とMr.鏑木はステディではありませんよ。
所謂、身体だけの関係。
お互いの欲求を簡単に発散し合える相手………
お若いバーナビーさんにはご理解戴けないでしょうか?」
その関係を持ったのは今夜が初めてなワケだが。
然もワイルドタイガーの意思確認は曖昧なままだ。
「分かりますッ!
………何となく…ですけど。」
ふふ……強がりを。
他人に己が子供だと思われる事を必要以上に嫌悪しているようだ。
これでは確かに、ワイルドタイガーがこの男を『バニー』と呼んで可愛がりたくなるのも頷ける。
何一つ無駄の無い完璧な容姿、その上周辺の人間から愛される為の資質をも併せ持つスーパーヒーロー。
……………眩しいな。
故に、この眩しく美しい男が欲しい。