第18章 Tintarella di luna 後編
恐らく彼はこの遣り取りを覚えてはいないだろう。
だがこれは私の為の大事な免罪符なのだ。
こういった形でワイルドタイガーが欲しかったのかは自分でも良く分からない。
ただ『挿入れてえよ』の後、彼が『……バニー』と続けた事が、私の皮膚をチリチリと焦がしたのは間違いない。
『バニー』と聞くまでは、この男を手に入れられればそれで良かった。
だがもうそれだけでは会心出来なくなってしまったのだ。
………あの美しい男は必ずここへ来る。
私はその確信を持って一度玄関まで行きドアロックを開けておいてから、再びベッドへ戻りワイルドタイガーに跨った。
そして正に望んだ通りの結果が訪れ、今の私は酷く高揚している。
固まったまま動けないでいるBBJを尻目に、私は一層激しく腰を揺らしエレクトした自身のペニスを扱いた。
「ん……んんッ……」
「ぅあ……気持ち…いッ……」
「どうですか、Mr.鏑木?
私は貴方を満足させられていますか?」
「ハッ……ハア…
スゲー……イイ。
溶けちまいそ……」
私の卓越した話術によって碌に意識の無いこの男に言葉を吐き出させてはいるが、このまま続けるといつまた『バニー』と言い出すか分かったものじゃない。
それでは私の謀が完遂されない事になる。
なので私は上体を倒し、ワイルドタイガーの唇を塞いだ。