第8章 love's oracle ~dandelion~ Ⅱ
「でもね、やっぱり『ありがとう』なの。
私がライアンに伝えたい言葉は『ありがとう』だけ。」
「………?」
「私と出会ってくれて『ありがとう』
私を大切にしてくれて『ありがとう』
私の目を治すために戦ってくれて『ありがとう』
ねえ………今夜、私は貴方に再会出来た。
本当に『ありがとう』」
笑顔のままだ。
最初にふわりと笑ったままの表情で、のグリーンアイからは止め処なく涙が溢れていた。
「バーナビーさんから聞いたの。
ライアンは『自分が傍にいるとは幸せになれないから』って
身を引いたんだ…って。
確かにヒーローの傍に居るのは大変だと思う。
怪我したり、犯罪に巻き込まれたり……
ずっと心配してなくちゃいけないよね。
でもね、ライアン……
私、自分の幸せを自分で決められるくらいには強いんだよ。」
ちょっと待てよ……
ちょっと待てって………
そう言いたいのに声にならねえ。
ダメだって……その先は………
「ライアン……貴方を愛してる。」
あーあ……言っちまった。
『愛してる』は俺の方から伝えなきゃいけない言葉だったのに。
クソッ……だったら俺だって、もう我慢するのはヤメだ!
「行くぞ!」
勢い良く立ち上がり、の手首を掴んだ。
その意味をちゃんと悟ってくれたが小さく頷くのを待って俺達は歩き出す。
アペリティフのグラスを乗せたトレイを持つメートル・ディの前を早足で横切りながら
「すまねーな。
また来るから……」
と、俺がウインクしてやると
「はい。
いつでもお待ちしております。」
メートル・ディは何故か嬉しそうに微笑んで、小さく頭を下げた。