第7章 love's oracle ~dandelion~ Ⅰ
なかなか止まらないの涙を根気良く拭い続けてやれば、漸く少し落ち着いてきたみたいだ。
「ごめんなさい。
私がこんな事、言える立場じゃないのに……」
俺から距離を取ろうとするの手をグイッと引き寄せ抱き締める。
あー……キスしてえ。
チェリーみたいな唇だけじゃなくて、顔中にキスして砂糖菓子みたいに甘く蕩けさせてえ。
けど……我慢だ、我慢!
さっきバーナビーにも牽制されちまったしな。
それになにより……自分だけの欲望で突っ走って、に嫌われるのなんてまっぴらゴメンだ。
そんな邪な考えを吹っ切るために、俺は当たり障りのない会話で誤魔化す事にした。
「そーいえば……モリィはどーしたんだ?
さすがに病院には入れねーだろ。」
「あ……モリィはお母さんと先に帰ったの。」
「は……?
お母さん?」
「実はね……
お母さんが待ち合わせ場所までコッソリ覗きに来てたらしくて。
時間が過ぎても帰ろうとしない私を見兼ねて
遂には声を掛けてきたんだけど……
その後にバーナビーさんが来てくれたんだ。」
「そっか………」
「………ゴメンなさい。」
「いやいやッ……
全然謝るよーなコトじゃねーだろ!
娘を心配する親なんて至極当たり前じゃねーか!」
「………うん。
ありがと。」
俺の腕の中でがホッとしたように小さく息を吐く。
そっか………
だけじゃなくて、の家族にも俺がヒーローだって知られちまったか……。
きっと今頃、複雑な想いでいるんだろーな。
ヒーローとはいえ、娘を傷付けた奴と同じ………《化け物》
普通の男であれば良かったのに…と、どうしてゴールデンライアンなんだ…と、遣りきれない感情に押し潰されそうになってンだろーな。
を見てれば分かるよ。
大切に大切に……愛されて育ったんだって。
じゃあ…………
俺に出来るコトなんてさ………