第6章 真っ直ぐな瞳
その日の夜、一人暮らしのアパートでテレビに齧り付いてインタビュー中継が始まるのを待つ。
あと5分。
…始まった。
〈世界最高峰のピアノコンクール、3年前に史上最年少入賞を果たした日本の天才ピアニスト少女、さんが今年も出場し、最優秀賞という快挙を成し遂げました!〉
「っしゃあっ!」
誰も見ていない1人の部屋で、思わずガッツポーズをしてしまった。
…でもおかしい。
画面が、一向にインタビュー画面にならない。
いや、なってはいるんだけど、画面にがいない。
ピンポーン…
玄関から聞こえるインターホン。
今はテレビに集中したいし…居留守使おうか…
ピンポーン…
あ、電気ついてるし居留守は無理か。
ピンポーン…
「はいはい、ちょっと待ってー!」
若干イラつきながら、玄関を開ける。
同時に感じる、胸の辺りへの軽い衝撃と柔らかい感触。
「え……?」
『秋くんっ!ただいまっ!』
扉を開けっ放しにしていたリビングから聞こえる、テレビ中継のキャスターの声。
〈えー…只今入った情報によりますと、さんはコンクール後、『大切な人が待っているから』と、すぐに日本に帰国したそうです。〉