第1章 それは突然の事だった
「なあ赤葦、朝の、あのって子知ってる?」
授業をいつも通り受けて、部室で会った赤葦にジャージに着替えながら聞いてみる。
同じ2年だし、もしかしたら…
「いや。1年も今も同じクラスじゃないんで…」
「そっか」
「なんだ木葉!が気になってんのか!?」
「そんなんじゃねえよっ!」
少し期待しただけに、赤葦の返事に相槌を打つだけに留めると、煩い木兎に言い返す。
だから俺は聞こえなかったんだ。
「ただ、どっかで見たことがあるような…」と言う赤葦の言葉が。
部活中、ふと2階のギャラリーを見上げると、そこにが居た。
俺と目が合うと、にっこり笑いながら小さく手を振る動作は普通に可愛い。
けど、木兎の言葉を思い出した俺は、ふいっと目を逸らした。
俺がバレー部だって知ってたのか?
でも、うちのバレー部には大エースが居る。クールな司令塔も居る。
俺よりカッコイイ奴はたくさん居るから、目移りもするかもな。
俺は木兎の事カッコイイとか絶対言わねえし思わねえけど。
休憩中にチラッとが居た所を見上げると、そこにはもう誰も居なかった。