第5章 お前と俺と
こいつは、今から俺が何を言おうとしているのか、きっとわかってない。
「…」
名前を呼ぶと、はどこか不安そうな顔で俺を見上げる。
そんな姿に、ふっと小さく笑うと、俺は想いをに打ち明けた。
簡潔、かつ、一番わかり易い言葉で。
「、好きだ」
時間が止まったような感覚。
は固まったまま動かない。
と、の不安に揺れていた瞳から、一粒涙が零れた。
「…?」
少し不安になって、小さく名前を呼ぶ。
『う…嬉しく、て…っ』
そんなを、俺は思わず抱きしめた。
『私、この体育館で初めて先輩を見かけたんです』
少し落ち着いたらしいが、俺の腕の中で話し出す。
『他の先輩たちと笑い合いながらも、真剣にプレーする先輩に、一目惚れしました』
そう言ったは、恥ずかしいのか俯いてるけど、髪の隙間から見える耳が真っ赤になっている。
「俺は、の真っ直ぐな瞳に惹かれたよ」
素直な気持ちをそのまま話せば、は驚いたのか、真っ赤な顔で俺を見上げる。
「ははっ、顔真っ赤」